好きなもの

インドの著名なヨガの行者のもとにやってきた一人の青年が、弟子にしてくれと言った。行者は受け入れて、さっそく精神集中から修行させた。ところがうまく精神集中できない。そこで行者は青年に聞いた。
「お前の一番好きなものは何だ?」
青年は言った。
「飼っている仔牛が好きです」
「それならもう精神集中のことは考えなくてよい。ただ朝から晩まで修行部屋に座り、お前の好きな仔牛のことを考えなさい。鼻面の形、目の形、耳の形、角の形……牛の頭から尻尾まで何度も細かく思い描きなさい」
それから数週間後、いまだ部屋にこもる青年に行者が声をかけた。
「もういいだろう、出てきなさい」
中から体を動かす音が聞こえてきたが青年は出てこない。やがて青年の声が聞こえた。
「出ていきたいのですが、ツノがつかえて出られません!」
『自分でできる超能力』P194

好きなものを思い描けば精神集中が成せるだけでなく、そのものと一体になる。自分と好きなものの区別がつかず、自分と神の区別もつかなくなる。それがヨガでいう「三昧(ざんまい)」の状態だという。
ヨガでなくても好きなものを追うことで人は輝く。アイドルのおっかけもそうだし、ダンスに打ち込むとか運動を続けるのそう。一心不乱にごっこする子供はまさにそれだ。私は「女が好き」。そのあげく「女になりたい」と思った。だから化粧も楽しいし、服も楽しい。バッグも靴も楽しい。
大切なことは、単なる好きなことをするのではなく、好きな対象と一体になろうとすることである。一体になることとは、自分を消して器になることである。器になるとは自分の中に入ってくるものを貯めることも、捨てることも、磨くこともできるということである。それが真の自己肯定のための精神集中である。
2026年4月20日

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